マーケティングリサーチとは?役割とやり方
公開日:2021/11/30 最終更新日:2024/10/23
マーケティングリサーチとは、顧客のニーズや市場の状況を正確に把握し、より効果的な戦略を立てるために欠かせないプロセスです。
例えば、新商品を企画する際や既存サービスの改善を考える際には、顧客が本当に求めていることや、競合との差別化を意識することが重要です。リサーチを通じて得られるデータやインサイトは、ビジネスの意思決定に役立ちます。
この記事では、マーケティングリサーチの役割と、その実施方法について詳しく解説します。
目次
マーケティングリサーチの実施目的
マーケティングリサーチの実施目的は、企業やブランドがターゲット市場における顧客のニーズ、期待、行動を把握し、効果的なマーケティング戦略を構築するための基礎情報を得ることです。具体的には、次のような目的でリサーチが行われます。
まず、顧客のニーズや好みを把握することが重要です。顧客が何を求めているのか、どのような製品やサービスに魅力を感じるのかを理解することで、よりターゲットに合った商品開発やサービス提供が可能になります。
次に、競合他社の分析もリサーチの大切な目的です。競合他社の強みや弱み、市場でのポジションを把握することで、自社の差別化戦略を強化し、市場シェアの拡大を目指すことができます。
さらに、市場トレンドの把握も挙げられます。市場は常に変化しており、顧客のニーズも時間とともに変わるため、これらの変化に迅速に対応できるよう、定期的なリサーチが必要です。これにより、ビジネスの方向性を見直し、成長戦略を調整することが可能になります。
また、新商品やサービスのテストとしてもリサーチは効果的です。市場に出す前にターゲット顧客の反応を測定し、必要に応じて改善することで、成功確率を高めることができます。
最後に、マーケティング活動の効果測定もリサーチの目的のひとつです。実施したキャンペーンやプロモーションの効果を分析し、次回の活動に向けてデータを蓄積することで、より効果的なマーケティング施策が可能になります。
マーケティングリサーチは、ビジネスの成功に向けた意思決定をサポートするための重要なツールです。適切に行うことで、企業は市場での競争力を高め、持続的な成長を実現することができます。
マーケティングリサーチの種類と手法
マーケティングリサーチにはさまざまな種類と手法があり、目的や状況に応じて使い分けることで、より正確で有効なデータを収集することができます。リサーチは大きく分けて定量調査と定性調査の2つに分類されますが、ここでは主に定量調査に焦点を当て、その具体的な手法を紹介します。
定量調査
定量調査は、数値やデータを集めて分析する調査手法です。顧客の行動や意見を数値化し、その結果を統計的に処理することで、マーケティング戦略の基盤となるデータを得ることが目的です。代表的な手法には、インターネット調査や会場調査、訪問調査、郵送調査などがあります。これらの手法を組み合わせることで、より幅広い情報を集めることができます。
インターネット調査
インターネット調査は、オンラインでアンケートを配信し、回答を収集する方法です。迅速に大量のデータを集めることができ、コストも比較的低いため、非常に一般的な調査手法です。さらに、ターゲット層を絞り込んでリサーチできるため、特定の属性を持つ顧客層に焦点を当てた調査も可能です。
例えば、特定の年齢層や地域に住む人々に対してアンケートを実施し、購買行動や商品に対する満足度を数値化して把握することができます。インターネット調査は、スピーディーに結果を得られるため、新製品の反応や市場トレンドを素早く確認したい場合に非常に効果的です。
会場調査
会場調査は、特定の場所に集まった参加者に対して、直接アンケートやインタビューを行う手法です。新商品やプロトタイプの実物を参加者に見てもらい、その場で反応を得ることができるため、商品の感触やデザイン、使い心地などをリアルタイムで確認できるのがメリットです。
例えば、展示会やマーケティングイベントの場を使って会場調査を行い、来場者から直接フィードバックを集めることで、リアルな消費者の声を効率よく取得できます。
訪問調査
訪問調査は、調査員が直接対象者の自宅やオフィスを訪問して、アンケートやインタビューを行う方法です。訪問調査は、より詳細な意見や反応を得ることができるため、インターネット調査や会場調査では得られにくい、深いインサイトを収集することが可能です。
特に、製品の使用状況や生活習慣に関する詳細なデータを収集したい場合、訪問調査が有効です。調査員が対面で行うことで、質問への理解を深めてもらいやすく、より信頼性の高いデータを得られます。
郵送調査
郵送調査は、アンケートを郵送して回答を返送してもらう方法です。特定の地域や高齢者など、インターネットにアクセスできない層への調査に適しています。郵送調査は、回答者がじっくりと考える時間を取れるため、詳細で深い意見を引き出すことができる一方で、回答回収に時間がかかるというデメリットもあります。
また、返送されないケースもあるため、回収率を高める工夫が必要です。例えば、アンケートと一緒に返送用の封筒を同封するなど、回答者が負担を感じないよう配慮することで、回収率の向上が期待できます。
定性調査
定性調査は、数字やデータを集める定量調査とは異なり、人々の考えや感情、行動の背景にある「なぜ?」を深く掘り下げるための調査手法です。顧客の潜在的なニーズや感情にフォーカスし、定量調査では見つけにくいインサイトを引き出すことができます。この調査は、新商品の開発やブランド戦略の改善などに役立つ、価値の高い情報を提供します。主に、デプスインタビューやグループインタビューといった手法が用いられます。
デプスインタビュー
デプスインタビューは、調査員が1対1で対象者に対して行う、深く掘り下げたインタビューの手法です。通常、1時間から2時間程度かけて行われ、対象者の考えや感情、価値観を詳細に聞き出すことが目的です。この手法は、表面的な回答だけではなく、思考の深層にある潜在的な意見や感情を探るのに適しています。
たとえば、新しい製品やサービスについて、対象者が「どう感じているのか」「なぜそのように感じるのか」を具体的に聞くことで、商品やサービスに対する本音を引き出すことができます。また、消費者が日常生活でどのように商品を使用しているかなど、実際の使い方や問題点も把握できるため、製品改善に向けた貴重なインサイトを得ることが可能です。
デプスインタビューは特に、少数のターゲット層や専門的な意見が求められる場合に効果的で、定量データでは得られない個別のニーズや感情を深掘りするのに最適です。
グループインタビュー
グループインタビューは、一般的に6~10名程度の参加者を一度に集めて行う、座談会形式のインタビュー手法です。この方法の大きな特徴は、参加者同士の対話や意見交換によって、新たな視点やアイデアが生まれる可能性が高い点です。また、他の人の意見を聞くことで、自分では気づかなかったことに気づいたり、新たな発見が生まれることもあります。
例えば、グループインタビューでは、ある商品に対する異なる視点や感情を短時間で集めることができ、製品のコンセプトや広告戦略の立案に役立てることができます。参加者が自由に意見を交換し、共感や反発を示すことで、商品に対するさまざまな反応をリアルに観察できます。
また、インタビュアーが進行役となり、特定のテーマに沿って会話を進めるため、参加者の意見を引き出しやすい環境が整えられています。この手法は、ターゲット市場の反応を素早く把握したいときや、アイデアを集約しやすい方法として広く活用されています。
マーケティングリサーチのやり方
マーケティングリサーチは、顧客のニーズや市場の動向を把握し、効果的なマーケティング戦略を立てるための重要なプロセスです。リサーチを成功させるためには、明確な目的設定から調査の実施、データ分析まで、一連のステップをしっかりと踏むことが大切です。ここでは、マーケティングリサーチを進めるための具体的な手順を詳しく説明します。
実施の目的を明確にする
マーケティングリサーチを始める際、最初に行うべきことは、実施の目的を明確にすることです。リサーチを通じて何を知りたいのか、どのような問題を解決したいのかを具体的に設定しましょう。たとえば、新商品の需要を把握したいのか、既存顧客の満足度を知りたいのかによって、調査の手法や質問内容が大きく変わります。
目的を明確にすることで、リサーチがブレずに進められ、結果も有効に活用できるようになります。「市場の動向を知りたい」「競合他社の強みを把握したい」など、調査の目的を具体的に定めることが成功の第一歩です。
適切な手法を選ぶ
次に、適切な調査手法を選ぶことが重要です。マーケティングリサーチには、定量調査(アンケートや統計データの収集)や定性調査(インタビューやグループディスカッション)など、さまざまな方法があります。調査目的や対象となる顧客層に応じて、最適な手法を選びましょう。
例えば、広範なターゲット層の意見を数値で把握したい場合は、インターネット調査や電話調査が有効です。一方、顧客の深層心理や製品に対する感情を知りたい場合には、デプスインタビューやグループインタビューが効果的です。調査対象の規模や目的に応じて、最も効果的な手法を選ぶことが、的確なデータを得るための鍵となります。
調査項目を考える
次に、調査項目をしっかりと考えるステップです。リサーチを成功させるためには、目的に応じた適切な質問を設定することが必要です。質問項目は具体的かつ簡潔であることが重要で、答えやすい形式にすることで、回答者から有益なデータを引き出すことができます。
例えば、製品に対する満足度を調査する場合は、「この製品の使いやすさを5段階で評価してください」などのスケール方式や、「どの機能が一番役立ちましたか?」といった具体的な質問を設定します。回答者が回答しやすく、データとして集計しやすい質問を考えることで、調査結果の精度を高めることができます。
調査を実施する
調査項目が整ったら、いよいよ調査を実施します。実施の方法は、オンライン調査、電話調査、訪問調査など、選んだ手法によって異なります。調査を実施する際は、回答者が安心して回答できる環境を整え、調査の趣旨や目的をしっかりと説明することが大切です。
特にアンケート形式の調査では、回答者が負担に感じないように、質問の数や形式にも配慮する必要があります。調査対象者にとってわかりやすく、答えやすいフォーマットを作成し、調査の実施がスムーズに進むよう心がけましょう。
集計・分析する
最後に、集めたデータを集計・分析するステップです。集めたデータをそのままにせず、しっかりと整理して分析することで、具体的なインサイトを導き出すことができます。定量調査では、数値データをグラフ化して傾向を分析し、定性調査ではインタビューの内容をカテゴリ分けして、顧客のニーズや課題を浮き彫りにします。
分析結果から、調査目的に対する結論を導き出し、次のアクションプランを立てることが重要です。例えば、「商品に対する満足度は高いが、価格に不満がある」など、具体的なデータに基づいてマーケティング施策を改善・実行することで、調査結果を最大限に活用することができます。
マーケティングリサーチの事例
マーケティングリサーチは、さまざまな業界で活用され、消費者のニーズを把握し、より効果的な戦略を立てるために役立っています。ここでは、具体的な企業のリサーチ事例をいくつか紹介します。これらの事例から、リサーチがどのように活用され、ビジネスに影響を与えたかを理解することができます。
食品会社の例
ある大手食品会社では、新商品の開発に際し、消費者の味の好みや健康志向を把握するためにマーケティングリサーチを実施しました。まず、ターゲットとなる消費者層に対してインターネット調査を実施し、健康志向の食材に対する関心度や、食事の中で最も気を付けている栄養素についてのデータを収集しました。
さらに、定性調査として、消費者の家庭に訪問し、実際の食事スタイルや購入の決め手となる要因をインタビュー形式で詳しく探りました。こうして得たデータをもとに、ターゲット層が好む食材や栄養バランスに配慮した新商品を開発。リリース後、マーケティングリサーチで得たインサイトが、ヒット商品誕生のカギとなった事例です。
人材会社の例
ある人材紹介会社では、求職者と企業のマッチング精度を向上させるため、リサーチを実施しました。まず、求職者に対して定量調査を行い、就職活動中に感じた不満点や、理想の転職支援サービスについて意見を収集しました。また、企業側にもヒアリングを行い、求める人材のスキルセットや採用プロセスの改善点について調査しました。
これらの結果をもとに、求職者と企業の両方が満足する形のマッチングシステムを改良しました。また、定性調査では、転職希望者に対するインタビューを行い、転職活動で感じた悩みや不安を深掘りしました。こうしてリサーチを基に開発された新しいシステムにより、マッチング成功率が向上し、クライアント企業からの満足度も大幅にアップしたという成功事例です。
飲料会社の例
ある飲料会社では、若者向けの新しい商品を開発するにあたり、消費者の嗜好を把握するためのリサーチを行いました。特に、新しいフレーバーやパッケージデザインに関しての消費者の反応を調査するため、ターゲット層の若者に対して会場調査を実施。実際に商品を試飲してもらい、フレーバーの好みやパッケージの印象についてフィードバックを集めました。
また、グループインタビューを通じて、飲み物に求める価値やシチュエーションについての深い意見を収集。インタビュー参加者同士が意見を交換する中で、新たなアイデアが浮かび、予想外の需要に気づくこともありました。このリサーチ結果を反映した新商品の発売後、若者の間で人気が爆発的に広がり、リピート率の向上にも貢献した事例です。
まとめ
ここまでマーケティングリサーチとは何なのか、役割や手法、実施方法について解説してきました。
マーケティングリサーチを実施する上で最も大切なことは目的です。目的が明確になれば、目的にあわせた手法や調査項目、ターゲットなど、調査に必要なものが見えてきます。
目的さえ明確になっていれば、自分たちですべてをやる必要はなく、マーケティングリサーチ会社に依頼をし、最適な方法や調査内容、分析を提案してもらうこともできます。必要に応じてマーケティングリサーチを行う会社に依頼をし、マーケティング活動に活かしてください。
最後に宣伝ですが、弊社でも、マーケティングリサ―チのノウハウやリソースをフル活用して、実施後のマーケティングコミュニケーションやプロモーションまでを見据えた、ワンストップでのマーケティングリサーチを支援しています。
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