デプスインタビューとは?メリットとデメリット
公開日:2024/12/02 最終更新日:2024/12/02
マーケティングやリサーチの現場で耳にすることが増えた「デプスインタビュー」。1対1で深く話を聞くこの手法は、表面的なデータでは見えない本音やインサイトを引き出すのに役立つとして注目されています。
しかし、その一方で手間やコストといった課題も。この記事では、デプスインタビューの基本から、メリットやデメリット、活用のポイントまで、初心者でもわかりやすく解説します。
デプスインタビューとは1対1でのインタビュー
デプスインタビューは、調査対象者と1対1でじっくり話を聞くインタビュー手法です。この方法では、グループでの調査では得られないような、深い洞察を引き出せる点が特徴です。
1対1だからこそ、対象者が自分の考えを率直に語りやすく、真の意見や感情を知ることができます。また、インタビューアーはその場の状況に応じて質問を調整したり、さらに掘り下げたりすることが可能です。
例えば、新商品の開発やターゲット顧客の深層心理を探る際に非常に効果的です。対象者の言葉の裏に隠れた本音を捉えることができるため、デプスインタビューは貴重なマーケティングツールとして、多くの企業で活用されています。
デプスインタビューが有効な場面
デプスインタビューは、具体的にどのような場面で活躍するのでしょうか?ここでは代表的なケースをいくつかご紹介します。
新しいアイデアを生み出したいとき
たとえば、新商品やサービスを企画する際、消費者の潜在的なニーズや不満を知ることが重要です。デプスインタビューでは、「なぜその商品を選ぶのか?」や「どんな不満を抱えているのか?」といった深いレベルの質問を通じて、価値あるインサイトを得ることができます。
特定のターゲット層を深く理解したいとき
デプスインタビューは、特定の層に絞った調査にも適しています。たとえば、若い世代やシニア層など、それぞれの価値観や行動パターンをじっくりと探ることで、ターゲティング精度を高めることができます。
感情や行動の背景を探りたいとき
単に「どう思ったか?」だけではなく、その背景や理由に踏み込むことで、行動の根本原因を見つけることができます。これにより、広告やプロモーションの企画に役立つデータを収集できます。
このように、デプスインタビューは、数字や統計だけでは見えてこない人々の「本音」に迫ることができる手法です。特に、定性的なデータが求められる場面では、その威力を最大限に発揮します。
デプスインタビューのメリット
デプスインタビューは、1対1でじっくりと話を聞くスタイルだからこそ、特別なメリットを持っています。この手法を活用することで、他の調査方法では得られない価値ある情報を引き出せるのです。
深い洞察が得られる
デプスインタビューの最大の魅力は、対象者の「本音」や「心の奥底にある思い」を知ることができる点です。アンケートのように形式的な回答だけでなく、その理由や背景まで掘り下げることで、より深い洞察を得ることができます。
たとえば、「なぜこの商品を選んだのか?」という問いに対して、「便利だから」という答えだけでは終わらず、「どのように便利だと感じたのか」や「他の商品では感じられなかったポイントは何か」を具体的に聞き出すことができます。
柔軟に質問を変えられる
対話形式のため、相手の回答に合わせてその場で質問を調整できます。これにより、事前に用意した質問だけではなく、会話の流れに沿ってより具体的な情報や新しい視点を引き出すことが可能です。
たとえば、意外な回答が出たときに「それはどういう意味ですか?」と深掘りすることで、調査設計時には想定していなかった重要なインサイトを得ることがあります。
対象者がリラックスしやすい
1対1の対話は、グループでの調査よりもリラックスした雰囲気を作りやすいです。そのため、対象者は自分の考えをより素直に話しやすくなります。特に、デリケートなテーマや個人的な話題を扱う場合、この安心感は重要です。
また、言葉だけではなく、話しているときの表情や声のトーン、ためらいなども観察することで、回答の裏側にある本音を感じ取ることができます。これにより、データに深みが加わります。
定性的データが豊富に得られる
数字や選択肢では表現しきれない感情や意見を聞き取れるのも、デプスインタビューならではです。「何が好きか」だけでなく、「なぜ好きか」や「どんなシーンでその感情が生まれるか」といった詳細なデータを収集できます。
デプスインタビューのデメリット
デプスインタビューは非常に有効な手法ですが、万能ではありません。他の調査方法と同様に、いくつかのデメリットや課題があります。これらを理解しておくことで、より適切に活用できるようになります。
実施に時間と手間がかかる
1対1で行うインタビューは、対象者ごとに時間を確保する必要があるため、どうしても調査全体にかかる時間が長くなります。また、インタビューの準備や後のデータ整理、分析にも手間がかかります。特に、多くの対象者から意見を集めたい場合には非効率になることがあります。
例えば、10人分のデプスインタビューを行うと、それぞれ1時間程度の時間が必要になるだけでなく、その内容を分析するためにさらに数倍の時間が必要になることもあります。
コストが高くなりがち
デプスインタビューでは、対象者ごとにインタビューを実施するため、進行役や対象者への謝礼、会場費用などのコストが積み重なりやすいです。さらに、プロのインタビュアーを雇う場合には、それに伴う費用も考慮する必要があります。
大規模な調査では、アンケートやオンライン調査と比べて費用対効果が低くなることがあるため、予算に合わせた慎重な計画が求められます。
結果が偏る可能性がある
インタビューは深く掘り下げる形式のため、個々の対象者の意見がデータに大きく影響を与えることがあります。そのため、サンプル数が少ない場合には、特定の人の考え方や背景に偏った結果になりやすい点に注意が必要です。
また、対象者がインタビュアーを意識して、無意識のうちに「好印象を与える」回答をしてしまう場合もあり、本音が引き出せないこともあります。
データ分析が難しい
デプスインタビューで得られるデータは、文字や会話の記録など定性的なものが中心です。そのため、アンケートのように数値化されたデータと比べると、分析に手間がかかります。また、インタビュアーや分析者の主観が入る余地もあり、結果の解釈が難しいことがあります。
これを補うために、複数の分析者でデータを確認したり、他の調査手法と組み合わせたりする必要があります。
インタビュアーのスキルに左右される
デプスインタビューの成功は、インタビュアーのスキルに大きく依存します。質問の仕方や話を深掘りする能力、対象者がリラックスできる雰囲気を作るスキルが不足している場合、十分な結果が得られない可能性があります。
経験豊富なインタビュアーを起用することが理想ですが、それに伴うコストや人材確保の課題も出てきます。
デプスインタビューの進め方
デプスインタビューを成功させるためには、事前準備からインタビューの実施、データ分析まで、しっかりとした計画が必要です。それぞれのステップを押さえることで、調査の質がぐっと高まります。ここでは、デプスインタビューの進め方を段階ごとに詳しく解説します。
1. 調査の目的を明確にする
まず最初に、「何を知りたいのか?」をはっきりさせることが重要です。調査の目的やテーマを曖昧にしたままだと、インタビュー内容がブレてしまい、必要なデータを得られないことがあります。
例えば、新商品のターゲット顧客の価値観を深掘りしたいのか、既存サービスの改善点を探りたいのかを具体的に定めておきましょう。目的が明確であれば、質問の設計もしやすくなります。
2. 対象者を選定する
次に、インタビューの対象者を選びます。ここで重要なのは、目的に合った属性を持つ人を選ぶことです。たとえば、20代女性向けのスキンケア商品に関する調査なら、その商品を使いそうな20代女性を対象者とします。
また、調査結果に偏りが出ないように、対象者の属性(性別、年齢、職業など)が偏らないよう配慮しましょう。
3. 質問ガイドを作成する
デプスインタビューでは、その場の流れで自由に質問を進めることもありますが、事前に質問ガイドを準備しておくとスムーズです。質問ガイドには、次のような内容を含めましょう。
- 導入部分の質問(リラックスさせるための雑談や簡単な質問)
- 調査の核心に迫る質問(具体的な経験や感情を引き出す質問)
- 終了時の質問(まとめや追加のコメントを促す質問)
質問はオープンエンド形式(自由に答えられる形式)を基本にすると、より多くの情報を引き出せます。
4. インタビューを実施する
インタビュー当日は、対象者がリラックスできる環境を用意することが大切です。静かで落ち着いた場所を選び、進行役が親しみやすい雰囲気を作ることで、対象者も安心して話しやすくなります。
進行中は、相手の話を遮らずに聞き、必要に応じて質問を掘り下げていきます。また、表情や声のトーンなど、言葉以外の反応にも注意を払いましょう。
5. データを整理・分析する
インタビューが終わったら、収集したデータを整理します。録音データやメモをもとに、どのような意見や感情が多かったのか、共通点や相違点を探ります。
分析のポイントは、インタビューで得られた情報をそのまま受け取るのではなく、「なぜその意見が出たのか?」を考えることです。背景や文脈を深掘りすることで、より価値あるインサイトを見つけることができます。
まとめ
デプスインタビューは、消費者の本音や深層心理を探るのに非常に効果的な手法です。1対1の対話を通じて、数字や選択肢では捉えきれない価値ある情報を引き出すことができます。しかし、その分、時間やコスト、分析の難しさといった課題もあるため、適切な準備と計画が不可欠です。
この記事で紹介したメリットやデメリットを参考に、ぜひ自分のプロジェクトや調査に活用してみてください。
その他のマーケティングリサーチ手法についても知りたい方は、以下の記事を参照してください。